- 「海外添乗のアクシデント事例と対策を知りたい」
この記事はそんな方へ向けて書いています。
この記事でわかること
- 海外添乗「ドイツ・スイス13日間」のアクシデント12個
- 対策方法
本記事の信頼性
- 経歴:新卒で旅行社に入社し19年8ヶ月、出張手配×法人営業×添乗
- 保有資格:総合旅行業務取扱管理者、総合旅程管理主任者
- 添乗経験:国内・海外計100本ほどで、一般団体・教育旅行・視察旅行
添乗のアクシデント事例を多く知ることで、アクシデントを切り抜ける確率が上がります。
あとは実際に経験して行動して乗り越えることで、引き出しが増えていきます。
本記事では、アクシデントだらけの添乗記録を書籍『ツアーコンダクター』より引用して解説します。
この記事を読むことで、網羅的にアクシデントがわかり、添乗に役立ちます。
書籍『ツアーコンダクター』は1989年に発売された本です。
こんなにアクシデントばかりの添乗は稀です。
なお、添乗業務の本質については「添乗の基本業務のたったの2つだけ【数えること、確認すること】」にまとめています。
Contents
海外添乗ドイツ・スイス13日間【アクシデント事例12個と対策方法】
日程表「ドイツ・スイス+三大都市13日間」
日時 | 内容 |
1日目 | NH376便 名古屋07:50→成田08:50、JL562 新千歳15:00→成田16:35 LX163 成田21:00→ |
2日目 | チューリヒ06:05 チューリヒ07:20→ローマ08:50 着後、ローマ市内観光 ローマ2泊 |
3日目 | 終日自由行動 |
4日目 | LX603 ローマ09:45→チューリヒ11:25、チューリヒ13:00→フランクフルト14:10 ハイデルベルク泊 |
5日目 | ロマンチック街道 フュッセン泊 |
6日目 | ルツェルンへ ルツェルン泊 |
7日目 | ユングフラウヨッホ観光 インターラーケン泊 |
8日目 | TGV924 ジュネーヴ13:01→パリ16:38 自由行動 パリ2泊 |
9日目 | パリ市内観光、午後は自由行動 |
10日目 | AF814 パリ14:30→ロンドン14:30 ベルサイユ宮殿観光、ロンドン市内観光 ロンドン2泊 |
11日目 | 終日自由行動 |
12日目 | バンコク経由で帰国の途へ ロンドン09:50→チューリヒ12:50、チューリヒ14:05→ |
13日目 | バンコク06:40、バンコク11:15→成田19:00 空港にて解散 |
14日目 | NH375 成田09:40→名古屋10:40、JL565 成田17:55→新千歳19:25 |
引用して、解説します。
1.飛行機の遅延
アクシデント
LX163便がエンジントラブルのため2時間遅延。
成田発23時になるとチューリヒ着が8時頃になる。予定ではチューリヒ発07:20のLX610便に乗り継がなければならないが、不可能となる。対策
まずLX610便にわれわれの到着を待っているように強く交渉したが不可能とのこと。そこでチューリヒからの便を他のフライトにエンドースさせる交渉をしたがすぐにOKは出ない。そこで予定通りであればバッゲージをローマまでスルーで流すが、ロストバゲージの可能性があるのでとりあえずチューリヒで止める。なおエンドースの件はチューリヒに到着しないとわからない。
3点が大事です。
1.乗り継ぎ便が確定していないときは、バゲージをスルーチェックインしない
2.お客さまにきちんと「航空会社の責任」であることを説明する
3.添乗員は不安でも、お客さまに不安な気持ちを見せない
バゲージについては言うまでもありません。
お客さまにきちんと事情を説明するのは、添乗員の責務。
添乗員に非はないですが、責任の所在を明らかにしておきます。
お客さまも不安ですが、添乗員は堂々としていること。
添乗員が不安な気持ちを出すと、信頼してもらえなくなります。
航空会社に責任があるので後続便に振り替えてもらえますが、不安な気持ちで長時間のフライトを過ごすのはキツいはず。
早くチューリヒ空港に到着して、対応したい場面です。
2.航空会社との交渉
アクシデント
チューリヒのLXのトランジットカウンターにて確認をしたが、まだローマまでの代替のフライトは取れていない。対策
カウンターの係員ではらちがあかないので、マネージャーを読んで交渉したところやっとのことで予定より3時間遅れのアリタリア航空にエンドースが出来た。荷物はチューリヒ止めにしているので、その旨を伝え、AZに積み換えてもらう。
誰に交渉するかが大事です。
決定権のある人に交渉すると、すんなり解決することがあるからです。
3.ひったくり
アクシデント
自由行動日に一人のPAXが2人乗りのバイクの男にバッグごとひったくりにあう。その中にはパスポート、現金US$300、マスターカード等が入っていた。対策
まず最寄りの警察署へ出向き盗難証明書を発行してもらう。次にローマの日本大使館へパスポート再発給の申請をする。そしてカード会社へ紛失届けをして使用不能の手続きをする。なおパスポートの再発給まで3日間かかるとのことなので、PAXの世話をランドオペレーターに依頼し、その後の合流までの案内も依頼する。
添乗員の仕事は2つ
・行程の管理
・安全の確保
「安全の確保」は、「行程の管理」につながります。
「安全の確保」のためにトラブル予防の案内を徹底すれば、トラブルが減るからです。
トラブルが減れば時間のロスがなくなり、行程が乱れなくなります。
トラブルが発生すると対応に時間を取られます。
迷子や集合時間の勘違い、盗難、紛失などのトラブルが行程を狂わせます。
パスポート紛失の対応については「海外でパスポートをなくした場合の対処法【日本国内で紛失した場合】」で解説しました。
4.ロストバゲージ
アクシデント
フランクフルトにてロストバゲージが2個出る。対策
Lost&Foundにて所定の手続きをしてPIRを発行してもらう。その結果、夜になって無事発見されLXよりわれわれの宿泊先に届けられた。
ロストバゲージの経験はありませんが、ヨーロッパ方面ではロストバゲージはよく聞きます。
ロストバゲージの英会話は「添乗中のトラブルに役立つ英会話【5つの英語例文と和訳】」で解説しました。
5.夕食場所が取れていない
アクシデント
ハイデルベルグの夕食場所がオーバーブックのため、われわれの席が取れていない。対策
しつこく交渉をしてももうすでに他の団体が入っていてどうにも出来ない。レストランのマネージャーにプッシュしてそこよりグレードの高いレストランを予約させる。PAXにはお詫びとして飲み物のサービスをする。当然飲み物代はランドオペレーターに請求する。
事前に予約確認をするのが大事です。
理由は以下のとおり。
・早めにトラブルがわかれば交渉する時間が取れる
・レストランに行ってから交渉すると時間のロスになる
面倒でも連絡を1本入れておくことです。
経験談ですが事前にレストランに下見に行って、希望どおり予約が取れていなかったことがあります。
»海外添乗アクシデント:パタヤで貸切レストランが手配できてない地獄
他にも実際にレストランに行ったら予約が取れていなかったことがあります。
海外は日本と違い、いい加減なレストランもあるのです。
権限のあるマネージャークラスに交渉することが大事です。
一般スタッフは交渉しても開き直るのでタチが悪いです。
6.バゲージを持っていかれる
アクシデント
バッゲージダウンをしてロビーで確認した際個数はあったが、出発のときに最終チェックをしたらどうしても1個足りない。対策
ポーターと手分けして探し回ったが見つからない。恐らく他の団体が間違えて持って行ったと思われる。本日チェックアウトした団体を調べて後で連絡を取るしかないと判断して出発する。
スーツケースにネームタッグをつけるのは「安全の確保」につながります。
ネームタッグをつけていても、バゲージを持っていかれることがあります。
体験談
サイパン空港到着時にスーツケースを間違えて持っていこうとした人がいました。
会社のネームタッグ(目立つ色)をつけていたので、すぐ声をかけ、取り戻すことができました。
下記が大事です。
・ネームタッグをつけてもらう
・ネームタッグは目立つ色にする
白のネームタッグは多いので、避けたほうが良いです。
スーツケースがなくなったお客さまは旅行を楽しめません。
荷物管理も添乗員の大事な仕事です。
7.バゲージが見つかる。引き取り方法
アクシデント
フュッセンのホテルにチェックインした際、他のグループの添乗員からメッセージが入っていた。やはり間違えて持って行ったとのこと。対策
お互いの行程を確認したところ相手グループは10日目の3/14にパリに入る予定。われわれはその日にパリアウトなのでCDG空港のエアフランスのカウンターに預けておいてもらうように依頼。なおそれまでの着替えや身の回り品はPAXに購入してもらい、その費用については相手先の添乗員と私との折半にて負担。
スーツケースの引き取り方法として、空港が使えます。
覚えておいて損はないです。
8.夕食時のアトラクションの予約ができていない
アクシデント
ルッツェルンでの夕食はヨーデルを聴きながらと日程表にはあるが、実際に行ってみるとランドオペレーターからそういう予約にはなっていないといわれる。対策
急遽ヨーデルを入れてくれるように依頼したが手配つかず、PAXには謝罪をしてヨーデルの音楽だけを流してもらい、シャンパンのサービスをする。
添乗先でも、先々の予定を確認することです。
到着初日にガイドに全日程の予約再確認をさせるくらいが良いです。
レストランに到着してから手配できていないことがわかっても、どうしようもありません。
レストランにシンガーや演奏を入れることは当日にできる話ではありません。
確認、確認、確認が添乗員の仕事なのです。
9.天候により列車のダイヤが乱れる
アクシデント
ユングフラウヨッホ鉄道が天候不順のためダイヤが大幅に乱れ予約していた便がとれず、何時の列車に乗れるかまったく見通しがつかず。対策
この日は幸いにもインターラーケン宿泊なので多少遅れても影響はないが、10人近くの添乗員でごった返していたのでとにかくカウンターの一番前に待機して次の列車にすぐに乗ることが出来た。
天候不順のためなので、添乗員に責任はありません。
交渉しても列車が動くことはないので、カウンターに並ぶことは適切な対処法です。
この辺は経験がないと判断できないです。
ガイドも慣れているので協力して判断、決断したいところ。
10.天候により列車のダイヤが乱れる
アクシデント
予定のTGVが指定券があるにもかかわらず、他の団体が座っていた。対策
われわれのグループも指定席券を持っているのだからコンダクターに何とかするように強く要請する。しかし最初から座っているPAXも指定券を持っていたので結局はダブルブッキングと判明。仕方がないので何とか空いている席を見つけて号車も大分離れてしまったがバラバラに座ってもらう。こちらの誠意を少しでも見せるべく飲物を購入して、それぞれのPAXに配って回る。
他に席がないなら、どうしようもないです。
体験談
大渋滞にハマった時はサービスエリアで人数分の「肉まん」を買い、配布したこともあります。
お腹が減ると、お客さまもイライラしがちです。
食べ物や飲み物でカバーするのは効果的です。
11.渋滞により空港到着がギリギリになる
アクシデント
パリを出発する際に余裕を持ってホテルを出発したが、途中事故で出発時間1時間前に空港到着となる。免税品のRe-taxの手続きをしなければならないが、長蛇の列でしている時間がない。対策
情報によればEU間であればRe-taxの手続きはどこでも可能と聞いているので、とりあえず次の訪問地ロンドンで手続をしてもらうよう案内する。最悪の場合は成田の税関でスタンプを押してもらいパリへ郵送する方法をとる。
現地空港に向かうときは、十分な余裕を持って出発時間が設定されています。
それでも渋滞などでギリギリになることはあるもの。
「少し早すぎるかな」と思うくらいの出発時間でOKです。
間に合わなかったらシャレになりません。
12.バゲージにダメージが見つかる
アクシデント
成田到着後、荷物を確認したところダメージバゲージが2つあった。対策
成田空港南ウィング1階にあるLXのカウンターにて航空券とそのバッゲージを持って行き所定の手続きをとる。修理をした領収書をLXへ送付すれば個人の預金口座へ振り込まれるという案内をする。
成田空港に到着しても、ロストバゲージやダメージバゲージの心配があるため油断できません。
最後まで添乗員のケアが必要です。
まとめ:海外添乗のアクシデント事例と対策方法を知り、他人の経験を自分の経験にしよう
アクシデント対策のノウハウはいろんなパターンを知っていたほうがいいです。
何か事故が起きても、短時間で適切な対処法が出せるようになるからです。
年数をこなして場数を踏んでいけばノウハウは身につきますが、事前に知ることで時間を節約できます。
ツアーは何もなければ、普通に動いていきます。
添乗員は事故があったときに、的確に処理できるかが大事です。
他人の経験は、自分の力になります。
トラブルを乗り越えられる人は経験豊富な人ですが、「経験談」を知っている人も乗り越えられます。
「他人の経験」を「自分の経験」にできる人は強いです。
自分が経験しなくても、他人の経験を自分の経験にすることはできます。
添乗で参考になった「成功談、失敗談が豊富な3冊」を紹介します。
55歳で添乗員になった梅村さん『ヘトヘト日記』は「添乗員は謝るのが仕事」と刺さる言葉を述べています。
添乗の面白さ、辛さがわかりやすい大好きな本です。
以上です。
P.S. 海外添乗のアクシデント事例と対策方法を知ろう。
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