- 海外添乗員のトラブルについて知りたい
この記事はそんな方へ向けて書いています。
この記事でわかること
- 海外添乗「タイ・パタヤ」で貸切レストランが手配できてなかったトラブル
- トラブルの乗り越え方
本記事の信頼性
- 経歴:新卒で旅行社に入社し19年8ヶ月、出張手配×法人営業×添乗
- 資格:総合旅行業務取扱管理者、総合旅程管理主任者
- 添乗:国内・海外計123本で、一般団体・教育旅行・視察旅行
本記事では、タイ・パタヤの海外添乗で経験したトラブルを紹介します。
この記事を読むことで、トラブルの乗り越え方の一例がわかります。
トラブルのきっかけは小さなことですが、見逃せませんでした。
タイ・パタヤの売春の闇を知りたい方は「ブラックアジア」がおすすめです。
灼熱の太陽、知性を奪い取るアルコール、最後は売春ですべてを略奪するのがパタヤです。
Contents
海外添乗アクシデント:パタヤで貸切レストランが手配できてない地獄
タイ・パタヤのホテル「アヴァニ・パタヤリゾート&スパ」のレストラン「サラ・リム・ナム」で悲劇は起きました。
レストランが貸切手配ができていなかったのです。
【トラブル予防】レストラン「サラ・リム・ナム」に下見に行く
お客さまは16名様の視察団体で、3日目の最終日。
この日の夕食はレストラン「サラ・リム・ナム」(上記写真)を貸切手配して、お客さま専用の「シンガー&演者」を手配済でした。
手配内容は現地旅行社より書面で確約済でしたので、安心していました。
宿泊のホテルからレストラン「サラ・リム・ナム」までは、ソンテウ(乗合タクシー)で5分です。
最終日の午後は自由行動なので、夕食前の16時頃にガイドと一緒にレストランへ下見に行くことにしました。
夕食開始は18時30分。
ホテルには遅くとも17時30分には戻っておきたいです。
レストランに到着すると、スタッフはすでにテーブルセッティングを始めていました。
ドリンクカウンターや楽器も準備してあり、希望どおり「準備完了」に見えました。
【トラブルの種を発見】会場に端に、別のお客さまのテーブル・椅子が用意されている
下記写真をご覧ください。
左が「私のお客さまのテーブル」です。
右に「赤いテーブル・椅子」が用意されていました。
このときの気持ちは「貸切手配なのに、なぜ赤いテーブルがあるの?」です。
不審に思い、ガイドさんを通してレストランスタッフに「赤いテーブルは不要だと思うので、できれば端っこに寄せてほしい」と伝えました。
スタッフの返答は「このお客さまはVIPで2ヶ月前から予約しているお客さまです。テーブルは動かせません」です。
「???」です。
- こちらはレストランを貸切手配している(書面で確約済)
- お客さま専用の「シンガー&演者」も高額な金額で手配している
VIPだか何だか知りませんが「貸切手配OK」の書面をもらっている以上、1歩も譲れません。
レストラン貸切と「シンガー&演者」の前金も支払っているのです。
【トラブル解決に向けて】交渉開始
「面倒なことになったな」と思いながら、ガイドさんを通して交渉開始です。
交渉のコツは「日本一の添乗員が書いた接客業のおすすめ本【添乗は究極サービス業】」に書きましたが「感情的にならず、笑顔で粘り強く」です。
下記内容を「やんわり」とスタッフに伝えるよう、ガイドさんにお願いしました。
- 半年以上前からレストラン貸切OKの書面を頂いており、前金も支払済
- 「シンガー&演者」を高額な代金で手配済
- このままでは「シンガー&演者」の高額な演奏を、VIPお客さまは無料で聴けることになってしまう(おかしい)
上記を伝えてもスタッフの回答は変わりません。
「2ヶ月前から予約済のVIPだから、テーブルを動かせない」の一点張りです。
手を変え、品を変え、色々な角度から交渉しました。
- 「料金を払えば解決するのか」
- 「VIPのお客さまの時間をずらしてもらえないか」
- 「こちらが場所移動して解決するのか」
ガイドさんに何度も伝えてもらうことは、心苦しかったですが、1歩も引けません。
気がつくと、すでに時刻は16時30分を過ぎています。
17時までには交渉を成功させ、ホテルに戻って休みたい気持ちでした。
刻々と進む時間を意識すると、焦ります。
【トラブル解決不可】たった1つのテーブルが動かせない
何を言っても、テーブルを動かさないスタッフ。
ガイドさんは困った顔をしています。
ここで妥協してしまえばお客さまに被害が及びます。
おそらくお客さまは貸切会場の隅に用意された別席VIPが、演奏を無料で聴いていることに違和感を持ちます。
想像したら、怖くなってきました。
どうにか解決策はないものか、しばらく交渉を辞めて、立ちつくしたまま考えました。
スタッフは「早くこの場から立ち去ってくれ」と言わんばかりに、目の前で黙々と、着々とテーブルセッティングを進めています。
そんな作業を見ながら、もう1回、最初と同じ内容をレストランスタッフに伝えました。
結果は「動かせない」です。
たったひとつのテーブルが、1ミリも動かせないのです。
「1ミリも」です。
確約書面の効力の無さ、自分の無力さを呪いました。
【トラブル解決のアイデア】現地旅行会社に電話することを閃く
ふと、タイ・バンコクにオフィスのある手配先の旅行会社に電話することを閃きました。
携帯で、レストランスタッフを横目に見ながら、すぐ電話をかけました。
電話口に担当者が出てくれてホッとしながら、事情を説明。
ここでも基本的なスタンスとして「感情的にならずに粘り強く」です。
「確約書面の意味のなさ」を怒鳴り散らしても逆効果です。
現地旅行社に味方になってもらわない限り、状況は好転しません。
現地旅行社の担当者は「ホテルのレストラン担当者に確認しますので、その場で少しだけ待ってください」とのこと。
下記同士で話し合いをしてもらえると聞いて、少し希望の光が見えた気がしました。
- 手配した現地旅行会社
- アヴァニホテルのレストラン部門
現地旅行社から携帯に電話がかかってきました。
回答を聞くと、残念ながらレストランスタッフの回答は何も変わっていません。
「VIPのお客さまは2ヶ月前から予約していたので、テーブルを動かすことはできない」
絶望です。
いいかげん、嫌になってきました。
何をしてもうまくいきません。
ただ、このまま電話を切るわけにはいかないのです。
「そこをなんとかお願いできないか、話してほしい。困っています」と伝えました。
【トラブル解決】ホテルの日本人マネージャー登場
現地旅行社は「もう1回かけあってみます」とのこと。
信じて、待ちました。
時計を見ると17時近くになっています。
祈りたいです。
しばらくするとレストラン「サラ・リム・ナム」の会場に、日本人スタッフが現れました。
身なりはタイでは珍しいスーツ姿でしたので、役職は上のほうと感じました。
日本人スタッフはこちらに向かって歩きながら「私の名前」を確かめるように呼びました。
すぐに近づき、名刺交換です。
名刺を見ると「ホテルマネージャー」と書かれていました。
日本人ホテルマネージャーは「事情はよくわかりました。VIPテーブルをどかせましょう」とだけ言い、テーブルセッティングをしていたレストランスタッフを一喝。
「レストランスタッフの対応はなんだったんだ」と思う、返しようです。
すぐにテーブルを別会場へ運んでいきました。
その場に座り込みたくなりました。
やっと、17時過ぎにテーブルが動いたのです。
ホテルマネージャーには感謝です。
「確定書面」をもらっているので、当然と言えば当然ですが、1時間動かなかったテーブルが動いたのです。
安堵しました。
帰国してからホテルマネージャーにお礼のメールを送りました。
あきらめなければ何とかなるものです。
月並みな言い方ですが「誠意を持って事に当たれば何とかなる」と思った出来事でした。
まとめ:海外添乗員のトラブルの乗り越え方は、最後まであきらめず笑顔で粘り強く交渉
「事前にレストランに下見に行っていなかったら」と思うと、ゾッとします。
「日本一の添乗員が大切にする接客の作法」を読んでおいて良かったです。
添乗にトラブルはつきもの。
添乗員は協力機関の助けなしでは、仕事になりません。
- ガイドと協力
- 現地旅行社と協力
- 現地ホテルマネージャーと協力
協力機関は敵にまわしてはいけません。
大切なパートナーです。
そんなことが身に染みた出来事でした。
以上です。
P.S. トラブルは笑顔で粘り強く、交渉しよう。