- 添乗員の事故対応マニュアルを知りたい
- バスや飛行機の事故処理方を知りたい
この記事はそんな方へ向けて書いています。
この記事でわかること
- 添乗員のマニュアル(事故、クレーム対応)
- バス、飛行機などの事故、遅延、運休、欠航などの対応
本記事の信頼性
- 経歴:新卒で旅行社に入社し19年8ヶ月、出張手配×法人営業×添乗
- 資格:総合旅行業務取扱管理者、総合旅程管理主任者
- 添乗:国内・海外計123本(一般団体、教育旅行、視察旅行)
トラブルの対応方が、ツアーを印象づけます。
添乗員の評価を決定的にします。
本記事では、添乗員のマニュアルとして「事故対応」について解説します。
いざという時に慌てません。
事前にマニュアルでひと通り勉強しておくと、トラブル時に落ち着けます。
» ツアーコンダクター入門(JTB総合研究所)
Contents
添乗員の事故対応マニュアル【トラブル・クレーム対応】
1.事故対応
- 事故が起きた場合
- ケガ
- 病気
- 盗難・紛失
- その他のトラブル処理
1.事故が起きた場合
事故が起きたら下記6つの点に注意し、解決に努めます。
- お客さまの立場を優先させる
- 原因より処理を優先させる
- 感情的にならない
- 言い訳をしない
- 協力してくれた関係者にお礼を言う
- 事故にあっていないお客さまにお詫びをして、処理内容を報告する
報告のために、状況、時間をメモしておきます。
2.ケガ
お客さまがケガをした場合、その場に居合わせる乗務員、ホテルのスタッフなどに協力してもらいます。
お客さま本人が話をできる状態であれば、下記などの処理をします。
- 救急車を呼ぶ
- 医者へ行く
- 薬をつける
その後の旅行継続については、医師などの判断を仰ぎます。
3.病気
急病人が発生した場合は状況に応じて、タクシーや救急車を手配し、付添人をつけて病院へ運びます。
入院する事態であれば、患者の家族に連絡をして、現状を説明します。
大事にいたらない状態であれば、旅行を続けられるか医師の指示に従います。
なお急病人に持病やアレルギー症がある場合は、本人や同伴者に確認するなどの方法で、医師または消防署のスタッフに連絡をします。
食中毒と判明した場合
保健所の指示に従います。
発生場所の違いによる対応方法は、次のとおり。
1.旅館・ホテル内で発生した場合
旅館・ホテルの担当者またはフロントへ連絡し、相談しながら対処します。
2.乗り物(バス、電車、船舶、飛行機)の中で発生した場合
公共的な乗り物であれば、乗務員へ連絡して相談しながら対処し、貸切バスであれば最寄りの安全で連絡できる場所へ停車させ、救急車を要請します。
風邪の場合
お客さま本人の状態を確認しながら、医者の診察を受けるかについて本人と相談します。
ひどい症状であれば、昼食の休憩時間やホテルチェックイン後に病院に連れていき、診断結果を一緒に聞いて、今後の対処を医師に相談します。
4.盗難・紛失
旅行中に現金・携行品が、盗難・紛失した場合は、警察に届けを出し、発見させるのを待ちます。
本人の勘違いもあり得ますので、再度、持ち物をチェックしてもらうことも大事です。
旅館・ホテルでの盗難・紛失について、商法で規定されています。
1.お客さまから預かった品物
旅館・ホテルがフロントで正式に品物を預かり、なくしたり、壊した場合、原因が不可抗力によることを旅館・ホテル側が証明できない場合は損害賠償です。
2.高価品の場合
貨幣、有価証券その他の高価品は、お客さまが種類と価格を明示して旅館ホテルに預けた場合でなければ、紛失や破損で生じた損害を旅館・ホテルが賠償する責任は発生しません。
3.お客さまから預かっていない品物
旅館・ホテルがお客さまから正式に預かっていない品物は、旅館・ホテル側の責任は発生しません。
ただし、お客さまが預けていない物であっても、旅館・ホテル側の不注意、過失でなくなったり、傷ついたりした場合は損害賠償責任が発生します。
5.その他のトラブル処理
1.誤手配
行程上で誤った手配がされていたら、直ちに正しい手配をしますが、その際は会社に連絡して指示を受けます。
修復不可能な場合は、お客さまに事情を説明し、陳謝します。
ただし、賠償問題などについては現地でいかなる約束もしてはいけません。
2.忘れ物
忘れ物をした場所・時間・内容を確認して、宿泊施設、昼食場所、バス、列車、飛行機に速やかに問い合わせてお客さまへ報告します。
見つかった場合は、受け取り方法について確認します。
2.クレーム対応
添乗中に起きたクレームは、できるだけ旅行中に解決するように努めます。
- 謙虚にお客さまの言い分を聞く
- お客さまの要望を理解し、可能な限り満たすように努力
- 要望に沿えない場合は、誠意を持って事情を説明
- 主張は控えめに
50代で添乗員になった派遣添乗員・梅村達さんのクレーム対応3原則は以下です。
- 落ち着いた態度を取る
- 自分のせいでなくても謝る
- 迅速に対処する
詳しくは「【書評】『派遣添乗員ヘトヘト日記』でわかる添乗員の苦しさ、面白さ」で解説しています。
添乗員の事故対応マニュアル【運送機関などの事故処理】
1.運送機関などにおける事故発生時の対応
安全の確保
交通事故などの場合は、再度、他のお客さまにまきぞえなどが想定されるため、現場から安全な場所へ避難するなどの処置をします。
緊急連絡
警察署や医師への連絡が必要であるにもかかわらず、電話を利用できない場合は通行人や通過者、乗客などに協力を仰ぎます。
応急処置
医師の判断、治療、看護が必要な場合は、車掌、スタッフなどの協力を得ながら乗客の中に医師(または看護師)がいるか確認し、往診を依頼します。
医師がいない場合は、可能であれば乗り物内への医師の派遣を要請するか、下車船の手続きにより病院へ送る処置をします。
飛行機の場合は乗務員に協力を依頼し、添乗員は乗務員らの指示に従い、行動します。
また、医師、警察官などが現場に到着した後は、医師や警察官などの指示にしたがって行動します。
業務連絡
できる限りの処置をした後、会社に連絡し、状況により支援を依頼します。
記録
事故が発生した場合、原因・推移・処理・結果などの事項については、記録しておく必要があります。
記憶に頼らず、記録が大事です。
2.バス、飛行機の事故にかかわる添乗員の心得
バスの場合
バス車内は狭く、事故発生によりお客さまが慌てたりすると一層混乱を招きます。
まず、添乗員はお客さまを落ち着かせることが大事です。
なお脱出後の事故を防止するため、予定外の停車による危険性を十分認識させることが必要です。
航空機の場合
機内における事故については、機内が狭くいたずらに席を立ったりすると混乱を招くので、乗務員の指示に従い、順序正しい行動が大切です。
また、添乗員はできるだけお客さまの後部通路側に席をとり、常にお客さまを掌握し、いつでも動ける体制を整えておくことが必要です。
3.運送機関の遅延・運休および欠航
列車の場合
1.運行不能な場合
列車が運行不能になり、旅行継続が困難になったときは、代替列車により継続できるよう最寄駅または車掌に申し出て、指示を受けます。
2.運行不能が長時間にわたる場合
お客さまの希望(手配旅行)により下記の取扱いができます。
✔︎ 旅行を途中で中止とする場合
団体乗車券を駅または発行箇所に提出し、旅行を中止した駅から目的地の駅までの運賃・料金の払戻しを受けます。
✔︎ 途中駅で中止し、出発駅まで戻る場合
団体乗車券に印字された出発駅までの区間をJRの指定する列車などにより無賃送還を受け、運賃・料金の払戻しを受けます。
3.遅延の場合
列車が遅延したために接続列車に乗車できない場合は、最寄駅または車掌に申し出て、指示を受け、旅行を継続させます。
4.乗り遅れの場合
天候不良または他運輸機関の遅延などのため指定された列車に乗車できない場合は、最寄駅に申し出て指示を受けます。
原則として乗車できなかった列車の運賃・料金は無効となり、その後に乗車する列車の運賃・料金は新たに収受されますが、下記の場合にはJRの承認を得て、同種の列車に便宜乗車できます。
- 運輸上の支障がないとき
- 事情やむを得ないと認められるとき
- 乗車日の当日中であるとき
5.旅行途中で事故などやむを得ない事情により列車変更を必要とする場合
すみやかに関係箇所の連絡をし、指示を受けます。
マル販など、駅で払戻しのできない券種は証明書を持ち帰り、処理をします。
飛行機の場合
1.交通渋滞のため接続する運輸期間が遅れる場合
遅れが出ると判断した場合は、できるだけ早めに航空会社空港支店へ連絡して後続便への振替など適切な処置を受けられるよう依頼します。
2.欠航、延着の場合の取扱い方
✔︎ 欠航、延着の原因が航空会社の免責事項による場合
- JRなどの代替輸送の手配が可能な場合には、航空券に証明を受け、代替輸送の手続きを行い、旅行を継続します
- 代替輸送の手配が不可能な場合で、宿泊の手続きを取らなければならないときは、お客さまの費用負担で宿泊の手配を行います
✔︎ 欠航、延着の原因が航空会社の免責事項に該当しない場合
- JRなどの代替輸送の手配が可能な場合には、航空券に証明を受け、代替輸送の手続きを行い、旅行を継続します
- 代替輸送の手配が不可能な場合で、宿泊の手続きをとらなければならないときは、航空会社に経費を負担させるべく空港で責任者と交渉する
- 復路の飛行機が遅延し、お客さまがタクシーなどを利用しなければならないときや、帰宅が不可能で宿泊せざるを得ない場合は、航空会社に費用を負担させるべく空港で責任者と交渉します
船舶の場合
旅行中、天候悪化によりフェリーなどの船舶が欠航した場合は、宿泊場所を確保します。
船舶会社と直接交渉して運行再開情報を早く入手し、運行が再開された場合に乗船できる権利を得やすくしてきます。
4.その他の事故にあたっての心構え
気象・自然災害など
- 天候悪化の場合は、頻繁に気象情報を確認します
- 出発前に、行き先・通過地の気象状況を電話やインターネットで確認します
食中毒
1.出発前の注意
- 旅館や食事をする所を手配する際は、食品、調理、施設などを衛生上の観点からチェックします
- 梅雨期や夏期は、刺身などの生物に注意し、旅館などにも確認しておきます
2.食中毒が発生した場合
- 食中毒が発生したら、患者を安静にさせ、毛布などをかけて保温に努めると同時に医師と保健所に連絡します
- 患者の吐いたものはビニール袋に入れておき、医師や保健所のスタッフに見せます
- 医師や保健所のスタッフが来たら、患者の住所、氏名、年齢、職業などを知らせると同時に、参考資料として出発から発病までの食事場所の名称、住所、電話番号や食事内容を提出します
- 列車で発病した場合は、車掌に連絡して大きな病院のある駅に停車してもらうよう交渉するなど、協力を要請します
- 治療後の旅行日程などについては、医師や保健所に相談して決めます
火災と避難
1.避難の心得
- ビルの構造、2箇所以上の避難口を確認しておきます
- 避難器具の利用法や万一を想定して、室内で避難用具となりうるものを確認しておきます
- 煙に対する窒息防止法を心得ておきます(防煙フードや防煙マスクの利用など)
- 旅館・ホテルのスタッフの指示に従います
2.避難誘導の心得
- 各部屋に大声で火事だと知らせ、幼児などを抱えたお客さまに付き添って煙の流れてこないほうの非常口に誘導します
- エレベーターは煙の通り道になったり、閉じ込められる危険があるので、屋外避難階段で逃げるよう誘導します
- お客さまが持ち物を取りに戻るときは、押し止め、手近なものを羽織って逃げるよう誘導します
- 煙にまかれそうになったら、姿勢を低くし、はって避難します
- 頭や顔は濡れた布で守り、熱い空気を一気に吸い込まないようにします
- 動きやすいようスリッパを脱ぎ、靴に履きかえて避難します
- 避難する人に付き添い、防火扉を閉めてから避難します
- 助かるという強い意志を持って、大胆に行動します
- 避難した場所で人員を確認します
- 避難した場所が安全であるかどうか再度確認し、二次災害を防止するため、安全な場所に移動することも必要です
まとめ:添乗員のマニュアルを読み、事故に備える
備えあれば憂いなしです。
事前にザッと目を通しておくだけでも、心の余裕につながります。
以上です。
P.S. 事前にマニュアルを読んでおこう。
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