- 旅行会社の手配ミスの実例を知っておきたい
- 手配ミスで落ち込んでいるけれど、同じ気持ちの人はいないかな?
この記事はそんな方へ向けて書いています。
この記事でわかること
- 『よくわかる旅行業界』の手配ミスの内容
- 私の手配ミス体験談
本記事の信頼性
- 経歴:新卒で旅行社に入社し19年8ヶ月、出張手配×法人営業×添乗
- 資格:総合旅行業務取扱管理者、総合旅程管理主任者
- 添乗:国内・海外計123本(一般団体・教育旅行・視察旅行)
本記事を書いている私は、過去にさんざん失敗をしてきました。
大きな手配ミスをすると落ち込みます。
小さな手配ミスであれば、お客さまからちょっとお叱りをいただくだけで済むケースもあります。
しかし大きな手配ミスはそうもいきません。
ベテランでも手配ミスがあります。
「手配できている」と頭で完結しているからです。
本記事の前半では「よくわかる旅行業界」の手配ミスを引用して解説します。
記事後半では「私の手配ミス体験談」を告白します。
どれも起こりうる怖い話です。
Contents
【暴露】旅行会社での手配ミスの実例【2つ引用】
手配ミス実例①:朝食弁当300個が手配できてない
「よくわかる旅行業界」の内容をまとめます。
高校の修学旅行生300人を北海道旅行に添乗案内した時のこと。
青森から函館まで青函連絡船に乗船し、船で一夜をすごし朝がやってきた。
朝6時を過ぎに担任の先生が「生徒の朝食弁当はまだでしょうか」と催促。
その時にはじめて「しまった」と気がいた。
本体の北海道旅行に気をとられ、出発前にその方だけの確認をして、船中での朝食弁当の手配をしていなかった。
急いで船の売店で「弁当300個を何とかしてくれないか」と相談したところ「当船は一般客ふくめ700人近い乗船客があり、船に積み込んで用意してある弁当は300個しかない。すべて旅行社に引き渡してしまうと一般客の朝食弁当がなくなるのでできない。しかし半分の150個ならば売ってもよい」とのことで、とりあえず150個を確保。
その足ですぐに食堂に行き、残り150人分の食事の予約をお願いしに行く。
しかし「150人分の朝定食は無理で、材料にも限界がある。でもお米は十分ある」と言われたので「御飯ができるならば何かある材料でできるものはないか」と聞くと「ライスカレーならばなんとかできる」との返事。
「よしそれにきめた」と早速注文し、食券を手にして学校の先生の所に戻り、冷汗タラタラ陳謝し、生徒の半分を弁当、残り半分の生徒にライスカレーの食券を渡し食堂に案内。
見積書に「船中朝食弁当」の記載があるにもかかわらず、手配したものと信じてしまっている初歩的な手配のミスの例。
ピンチ脱出の姿勢に脱帽です。
「限られた時間でなんとかしないと」と焦りながらも、諦めずに交渉したからです。
私は何百個という手配ミスはありません。
添乗前日に関係機関すべてに手配内容を確認するからです。
ただ、前日の手配内容確認では間に合わないケースもありえます。
前日に弁当300個の手配漏れに気づいても、対応できない可能性があります。
気づき
- 手配内容の確認は1週間前にはする
- 当日に手配漏れがあっても諦めない
手配ミス実例②:昼食の手配を人まかせにして失敗
昼食ランクの手配ミスです。
予定よりも高級な昼食で予約していたのです。
弘法に日帰り参拝ツアーを組んだ。
バス1台、田舎の信楽を8時出発、午前中弘法さんに自由参拝をして12時集合、再びバスで京極に出る。
昼食はうなぎで有名な「かねよ」の京極店。
「サービス丼と吸物に茶碗むし」で当時950円也の「かねよ定食」にした。
しかしこの定食を手配しておくように命じておいたのが、何と普通定食に間違っていた。
50人がかねよの店につくと、染抜きの法被を着た玄関番のおじさんが「へい、いらっしゃい、団体さんのお着きー、お二階へどうぞ」と慇懃丁重。
変に思ったが、テーブル席で食べるよりは気分が良いので、案内されるにまかせた。
席に着くとまず前菜が出て、鯉の刺身がきた。
料理内容が違うので慌てた。
直ちに帳場へ飛んで行き「950円のかねよ定食を注文したのにこれはどうしたことか」と言うと「私どもの伺ったのは、普通定食で3,500円の料理を召し上がって戴いております」と言う。
「冗談じゃない。1人2,500円の赤字。何とかならないか」と交渉。
帳場も気の毒がって、直ぐに料理場にストップをかけてくれたが、もう支度ができているので何ともならない。
ただ「うな重をうなぎ丼に変更して3,000円にします」と言う。
後の料理は、うざくがくる、う巻の蓋物がくる、茶碗むしがくる、うなぎ丼にきも吸、鯉こく、客はおいしそうに食べながら「なかなか豪勢な昼飯やな、これやったらサービスが良すぎるやないか」他の客が「今日は仕舞い弘法で良い御利益がありますな」と言って御機嫌。
何が御利益なものか、私は一品一品くる毎に砂をかむ思いをしていたが、お客には心はうらはらに笑顔で接待。
旅行業者には年末は1番暇な時、バス1台でも動かせれば良いと思いつつやった仕事が、家内の手配ミスで、結局10万円ばかりの赤字、憤懣やるかたない思いで、事務所に電話すると、家内が、
「まあ、それはすみませんでした。……でも思いようです、この赤字はドブに捨てたものでもなく、盗まれたものでもなく、貴方の故郷のお客さまが喜んで得をしてくれたので、良い功徳ができたと思いましょ。怒らずに笑って帰ってきとくれやす、またよいことがおますがな……」
「それもそうだ」と私の顔に明るいものが甦えるのを覚えた。
失敗をくよくよせず、禍いを転じて福となすよう心掛けるべき。
事前確認を怠ったのが原因です。
手配を人まかせにしてはいけません。
人間はミスをするからです。
対策はダブルチェックです。
同じ人ではなく、別の人の目で確認するのです。
気づき
- 手配を人まかせにして安心しない
- 手配ミスに気づいたら、諦めずに交渉する
「お客さまは良い料理が食べれてラッキー、旅行会社は赤字でアンラッキー」です。
逆じゃなくて良かったです。
【体験談】夜も眠れない私の旅行会社での手配ミス4つを告白
手配ミスが解決するまで夜も眠れません。
手配ミス①:手配したJR券で新幹線に乗れない
お客さまの出張「東京ー静岡の往復JR券」を手配ミスしました。
日付や列車の間違いは、どんなにチェックしてもあるものです。
しかし私が間違えたのは「乗れないチケット」を渡してしまったことです。
JR券には2種類あります。
- 券面に金額記載されているJR券:通常のチケット
- 券面に金額記載されていないJR券:「指のみ」など
「指のみ」とは業界用語で「指定席のみ」の略です。
たとえば新幹線回数券に座席指定するときに発券します。
「新幹線回数券+指のみ」で指定席に乗れ「指のみ」だけでは乗れません。
私は間違えて「指のみ」だけをお客さまに渡してしまったのです。
「指のみ」には「日付、列車名、区間」は記載されていますので、傍目にはわかりません。
なぜか復路だけ「指のみ」で渡してしまい、お客さまは静岡駅の改札を通れず、現地でJR券を購入しました。
お客さまからのご連絡で事情を知った私は、JR東京駅のホームへ上司と謝罪に行ったのです。
お客さまは苦笑いでしたが、新入社員の私は泣きそうでした。
手配ミス②:野球チケットが取れない
たまたま上司が電話で受けた新規団体(20名様、プライベート)を、代わりに手配することになりました。
手配依頼の内容
- 東京ー新大阪の往復JRチケット20席
- 巨人vs阪神の甲子園戦のチケット20席
上司は海外専門なので、私が引き受けました。
問題は「巨人対阪神の甲子園のチケットが取れない」です。
お客さまの条件に「甲子園のチケット20席、近い席で確約」がありました。
他旅行社も嫌がる恐ろしい条件です。
おそらく他社に断られたので、当社に電話がきたのです。
上司は野球チケットの手配の難しさを知らず、確約して受けてしまったのです。
チケット発売日に手配をトライ
確保できたのは半分の10席です。
お客さまに報告するのが嫌でした。
勇気を出して連絡しましたが激怒です。
激怒が「地獄のはじまりの合図」です。
毎日webサイトをチェックしたり、他部署に相談したり、できる限りをしました。
しかし何をしてもどんなつてをたどっても取れないのです。
解決できないので、胃が痛くなり眠れません。
つらいのは他の仕事をしていても、頭の片隅には心配事が居座っていることです。
Yahoo!オークションで手配
鬱になりそうな毎日の中「Yahooオークションの確認」を思いつきました。
オークションで検索すると、なんと巨人vs阪神のチケットが出品されています。
席は少人数ごとに分かれてしまいますが、人数分の座席が販売されていました。
オークションで何がなんでも落札しなければなりません。
値段がつり上がろうが、赤字になろうが、取るしかないのです。
結果、お客さまに請求できる金額を超えましたが、無事手配できました。
お客さまには「座席は少し離れてしまうが、ある程度まとまって確保できた」と説明して、なんとか納得してもらえたのです。
JR往復チケットを含めれば赤字ではないですが、利益は微々たるものです。
上司とお客さまに挟まれていた日々に、上司から1つの言葉をもらいました。
「誠意を持ってことに当たれば解決できる」
上司の30年間のポリシーです。
聞いたときに泣きそうになりました。
忘れられない言葉に地獄で出会えます。
手配ミス③:海外航空券の発券期限を間違える
入社して10年、海外出張手配をさせてもらえるようになりました。
海外航空券はルールが複雑です。
- 発券期限
- 航空運賃
- 予約クラスごとの運賃ルール
どれも大事ですが、発券期限が1番大事です。
発券を忘れてしまうと予約が消えるからです。
同じクラスで予約取り直しができれば問題ありません。
私は発券期限を忘れてしまい、気づいた時にはすでに予約記録は消えていました。
予約を取り直そうにも、すでに座席は混み合い、手配できるのは125,000円高い座席だけです。
心臓からドキンと音がしました。
とりあえず、いったん125,000円の座席を予約しつつ、安い運賃を探す毎日が始まりました。
解決できないトラブルが重なると地獄の日々です。
解決するまでトラブルと寝食を共にするからです。
- A案件の航空券が取れない
- B案件のホテルがどこも満室
- 手配を間違えて、八方塞がりの状況
気持ちは「寝食を共にするのは添乗員だけにしてくれ」です。
結果的には先輩の助けもあり100,000円安く手配できました。
当初より25,000円高いですが、125,000円よりマシです。
損失25,000円は始末書です。
海外航空券の手配ミスは、損失が何十万になることもあります。
ビジネスクラスを間違えて100万近い損失の先輩もいました。
海外航空券はどれだけ慎重になっても、悲観的になっても「やり過ぎ」はありません。
手配ミス④:海外航空券手配でアメリカの州を間違える
アメリカには同じ都市名があります。
たとえば「都市コロンバス」はオハイオ州にもジョージア州にもあります。
ワシントンの都市名も多いです。
手配ミスは「都市名は同じでも、アメリカの違う州」だったのです。
お客さまは現地到着してから「違う都市」に気づかれました。
現地空港カウンターに事情を説明して、無料で別便で目的地まで行けました(ノースウエスト航空)。
優しいお客さまだったので、帰国後はアドバイスいただいただけで終わりました。
ゾッとする話です。
同じアメリカなのが救いです。
以降、他国も含め「州名」も確認するようになりました。
まとめ:手配ミスは「確認、確認、確認」で防ごう
手配ミスは乗り越えれば、あとで笑い話です。
ただ当時は「顔は真っ青、頭は真っ白」です。
大事なのは「確認、確認、確認」の基本動作です。
手配ミスに気づいて、自分ひとりで抱えることはつらいです。
精神的に安心して眠れません。
眠れないと体力も消耗します。
「明日が来なければいいな」と思ったこともあります。
「手配ミスで予約が取れない」は旅行会社で働くうえでつらいことの1つなのです。
以上です。
P.S. だからこそ「確認」が大事なのですね。
引用文献
関連記事旅行会社の5つのトラブル事例と解決策【法人営業18年の体験談】
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