- 添乗員として鉄道の知識を知っておきたい
- 海外の鉄道についてもちょっとかじっておきたい
この記事はそんな方へ向けて書いています。
この記事でわかること
- 添乗員のための国内の鉄道基礎知識、運賃
- 添乗員のための海外の鉄道基礎知識、Q&A
本記事の信頼性
- 経歴:新卒で旅行社に入社し19年8ヶ月、出張手配×法人営業×添乗
- 資格:総合旅行業務取扱管理者、総合旅程管理主任者
本記事を書いている私の添乗経験は、国内・海外問わず計123本です。
企業さまの社員旅行、視察旅行の添乗を担当しました。
本記事では、添乗員向けの鉄道知識・運賃について解説します。
この記事を読むことで、添乗員に必要な鉄道知識が身につきます。
用語などは固い表現が多いですが、慣れれば簡単です。
※参考図書:「ツアーコンダクター入門」
Contents
【入門】添乗員のための国内鉄道の基礎知識・運賃
国内鉄道の基礎知識を解説します。
1.鉄道と列車の種類
鉄道
種類 | |
1.JR | 正式名称は、○○旅客鉄道株式会社。 〇〇には、6つの地域が入ります。 北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州 |
2.第3セクター鉄道 | 国または地方公共団体が、民間企業と共同出資して設立した法人の運営会社。 旧国鉄・JRの鉄道を引き継いだものと、新たに設立されたものがあります。 |
3.私鉄 | 民間企業が運営する会社。 |
4.公営鉄道 | 地方公共団体が運営する市営地下鉄・路面電車など。 |
旅客営業規則
各社は、旅客と運送契約を結ぶにあたっての諸事項を明文化した、旅客営業規則を定めています。
※以下、JRのみ記載します。
列車の種類
規則上の区別 | 一般的名称 | 料金 |
急行列車 | 1.特急列車(特別急行列車) | 急行料金(特別急行料金)が必要 |
2.急行列車(普通急行列車) | 急行料金(普通急行料金)が必要 | |
普通列車 | 3.快速列車 | 急行料金不要 |
4.普通列車 | 急行料金不要 |
※1.特急列車には、新幹線と在来線があります。
※2.3.4.はすべて在来線です。
定期列車と臨時列車
季節を問わず運行する定期列車と、特定日のみ運行する臨時列車があります。
どちらも市販の時刻表に掲載されています。
ただし、団体専用に特別に運行する団体臨時列車は市販時刻表には掲載されていません。
列車の名称
すべての特急列車・急行列車および一部の快速列車・普通列車には固有の列車名があります。
同じ名称の列車が1日に複数運行する場合は、番号が付きます。
✔︎ 例:のぞみ1号、3号、5号など
始発駅、終着駅、途中停車駅
すべての列車には、始発駅と終着駅があります。
多くの列車は、途中の駅のいくつかで停車します。
添乗するツアーは、つねに始発駅から終着駅まで利用するわけではなく、途中停車駅で乗車・降車する場合もあります。
例:のぞみ103号で、名古屋駅→岡山駅間を乗車する。
始発駅:東京駅、終着駅:広島駅
名古屋駅の停車時間:2分
岡山駅の停車時間:1分
のんびりと乗車・降車できないのです。
2.設備
座席と寝台
大きく分けて座席と寝台です。
普通席、グリーン席、グランクラス
座席は3種類です。
- 普通席
- グリーン席
- グランクラス
普通席よりグリーン席のほうがゆったりしています。
普通席の車両を普通車、グリーン席の車両をグリーン車といいます。
グランクラスはグリーン席よりもゆったりとした座席です。
下記の新幹線の一部の列車に連結されています。
- 北海道新幹線
- 東北新幹線
- 北陸新幹線
専任のアテンダントが同乗し、飲み物などがサービスされます(一部列車を除く)。
指定席と自由席
座席は2種類です。
- 指定席
- 自由席
指定席は予約が必要です。
全車両指定席の列車があります。
寝台列車はすべて指定席です。
すべての特急列車・急行列車のグリーン席およびグランクラスは指定席で、自由席はありません。
車両番号と座席番号
車両および座席・寝台はすべて番号がついています。
ツアーではほとんど指定席(または寝台)を利用しますので、予め車両番号と座席(寝台)が指定されています。
座席では、窓側・通路側の番号がどれか知っておく必要があります。
たとえば、東海道新幹線のぞみ号は以下です。
✔︎ のぞみ号(東京駅⇨博多駅)の普通車:A〜E席
- A席、E席が窓側(Aが進行方向に向かって左側、いわゆる海側)
- C席、D席が通路側
- B席は3人がけの真ん中
✔︎ のぞみ号(東京駅⇨博多駅)のグリーン車:A〜D席
- A席、D席が窓側(Aが進行方向に向かって左側、いわゆる海側)
- B席、C席が通路側
3.運賃
運賃と料金
乗車するには運賃が必要です。
列車により、料金も必要です。
代表的な料金
料金の区別 | 内訳 |
速さに対する料金 | 1.特急料金(特急列車 ※指定席・自由席別) |
2.急行料金(急行列車) | |
設備に対する料金 | 3.指定席料金(急行列車、快速列車、普通列車の指定席利用) |
4.寝台料金 | |
5.グリーン料金、グランクラス料金 |
団体運賃
✔︎ 団体の規定
JRの旅客営業規則の規定は、「8名以上(へき地学校などの特別措置を除く)の旅客全員が、全工程を、同じ施設・発着駅および経路を同じくして旅行する場合で、JRが団体としての運送を引き受けたもの」です。
8名以上が一緒になって旅行すると考えればOKです。
✔︎ 団体の種別・割引率
団体名称 | 条件 | 団体旅客運賃の割引率 |
1.普通団体 | 下記以外 | 繁忙期 10% |
繁忙期以外 15% | ||
2.学生団体 | 指定学校または保育所の学生、生徒、児童または幼児などで構成され、教職員が引率するもの。 | 大人(小学生を含まない12歳以上)通年50% |
小児(6歳以上12歳未満と小学生)通年30% | ||
職員、添乗員など 通年30% | ||
3.訪日観光団体 | 訪日外国人の団体(8名以上とガイドなどの同行者) | 通年15% |
- 繁忙期:1月1日~10日、3月1日~5月31日、7月1日~8月31日、10月、12月21日~31日
- 繁忙期以外:1月11日~2月末日、6月、9月、11月1日~12月20日
- 学生団体:団体専用列車利用の場合を除く。JRの運送上の都合による場合を除き、グリーン車またはA寝台の利用はできません。
✔︎ 無料扱人数
31~50人の普通団体は1人分が、また51人以上では50人増すごとに1人分の運賃・料金が無料です。
31〜50人 | 51〜100人 | 101〜150人 | 151〜200人 | |
無料扱人数 | 1人分 | 2人分 | 3人分 | 4人分 |
✔︎ 申し込み期間
- 通常の列車の場合:出発日の9ヶ月前から14日前まで
- お座敷列車など団体専用の場合:出発日の9ヶ月前から2ヶ月前まで
年齢区分
名称 | 年齢 | 運賃・料金 |
大人 | 満12歳以上(12歳でも小学生は小児) | |
小児 | 満6歳以上12歳未満(6歳でも小学校入学前は幼児) | 大人の半額 ただし、グリーン料金、寝台料金は大人と同額 |
幼児 | 1歳以上6歳未満 | 無料 ただし、人数次第・座席専有などで有料 |
乳児 | 1歳未満 |
4.乗車券
団体運賃と団体乗車券
団体運賃を適用する場合は、団体乗車券が発行されます。
団体乗車券は、運賃と料金を包含しています。
1団体につき原則1枚の団体乗車券を発行します。
団体乗車券の様式
団体乗車券および別紙に記載してあることは、以下です。
- 団体名(または代表者名)
- 乗車列車
- 乗車日
- 席番
- 人数
- 金額(運賃および料金)
使用方法
団体乗車券の原則は、団体規定によります。
精算は発行箇所で行います。
1.乗車と下車
全員が同じ改札口を一緒に通ります。
※一部途中下車や例外があります。
2.人員減・払い戻し
駅で証明を受けます。
乗車・降車両方の駅で、「別紙」裏の「出札証明」「改札証明」欄に乗車実数を証明してもらいます。
終了後、企画旅行会社へ戻します。
証明 | |
1.出札証明 | 指定を取り消しできる場合(何らかの額の料金払い戻しがある)。なお団体運賃では列車出発2時間前以降の指定の取り消しはできない(料金は戻らない)。 |
2.改札証明 | 指定以外の払い戻し用。 |
3.帰路での一部途中下車
一部のお客さまが帰路途中下車を希望する場合は、車掌から証明書(団体旅客一部途中下車引継書または業務連絡書)を受けます。
お客さまは、以降、前途放棄です。
4.団体旅客乗車票
特定都区市内駅・東京山手線内駅内で、団体乗車券での出発駅までの区間、または到着駅からの区間をお客さまが個々に乗車したい場合に発行する証票です。
✔︎ 例:団体として出発(集合)は東京駅、あるお客さまは新宿駅からJRを利用hして東京駅に行きたい。
- あらかじめ団体旅客乗車票を発行し、当該お客さまに渡します(1人1枚)
- 当該旅客は上記区間を、この団体旅客乗車票で乗車できます
- 運賃部分のみ有効です
- 集合前、解散後の両方に適用できます
団体乗車券例
団体乗車券は、原則、1つの団体について、全工程につき1枚を発行します。
ただし、区間により人数が異なる場合は、区間ごとに発行します。
添乗員のための海外鉄道の基礎知識
海外鉄道の基礎知識を解説します。
基礎知識
予約手配
ランドオペレーターが行います。
企画旅行会社が行うこともあります。
乗車券
国・地域により団体割引運賃があり、ほとんどが団体乗車券です。
予約・手配方法、または鉄道により、日本出発前に渡してくれるのか、現地到着後に渡されるのかが異なります。
使い方は国・地域で異なります。
設備
国、列車によりさまざまです。
座席には1等、2等などの等級があります。
長距離寝台列車もあり、設備はさまざま。
長距離列車には、たとえば以下を備えるものもあります。
- 食堂車
- サロンカー
- 展望ラウンジ
- ビュッフェ車(軽食提供)
乗車・下車
国、列車によりさまざまです。
たとえば、以下です。
- 改札口/自動改札機(刻印機)がある駅、ない駅があります
- 車内で車掌の検札を受けます
- 多くのツアーでは、駅でランドオペレーターのミートスタッフがお手伝いします
- ポーターがいる駅では、ランダオペレーターの請負条件に含まれていれば、ポーターも手配してあります
ヨーロッパの鉄道6選
海外の各地にも魅力的な鉄道路線と列車があります。
EUROSTAR(ユーロスター)
イギリスとヨーロッパ大陸を結ぶ高速列車です。
最高時速300kmで運行。
乗車駅にはラウンジがあり、ビジネスプレミアクラスの乗客は無料で利用できます(スナック類、飲み物、インターネットなど無料)。
ビジネスプレミア | スタンダードプレミア | スタンダードクラス | |
食事サービス | ○(3コース) | ○ | ○ |
BAR車両 | ○ | ○ | ○ |
電源 | ○ | ○ | × |
ラウンジ利用 | ○(一部駅のみ) | × | × |
TGV(ティー・ジー・ヴィ)
フランス国鉄SNCFが世界に誇る高速列車です。
パリを拠点にフランス国内の都市や、スイス・イタリア・スペインなどの近隣国の都市を結んでいます。
最高時速は320kmです。
1等 | 2等 | |
食事サービス | ○(一部区間のみ) | ○ |
BAR車両 | ○ | ○ |
Wi-Fi(一部区間のみ) | ○(有料) | ○(有料) |
電源 | ○ | ○ |
THALYS(タリス)
ワインレッドで統一された車体と内装が特徴で、パリ・ブリュッセル・ケルン・アムステルダムなどの都市を結んでいます。
中でもパリ~ブリュッセル間は1時間半で移動できることから、旅行者にも人気の区間です。
1等 | 2等 | |
食事サービス | ○ | ○ |
BAR車両 | ○ | ○ |
Wi-Fi | ○ | ○(有料) |
ラウンジ利用 | ○(一部駅のみ) | × |
ICE(インターシティ・エキスプレス)
ドイツを拠点に周辺の6か国に乗り入れています。
最新技術を駆使した車両は、ヨーロッパ一の快適さと評されています。
車内はガラスと木目を多用したモダンリビング風で、走行中の静音にも注力した造りになっています。
1等 | 2等 | |
BAR車両 | ○ | ○ |
Wi-Fi(一部区間のみ) | ○(有料) | ○(有料) |
電源 | ○ | ○ |
ラウンジ利用 | ○(一部駅のみ) | × |
FRECCIAROSSA(フレッチャロッサ)
イタリアの国鉄に相当するトレンイタリアが運行する高速列車です。
イタリアの高速列車と言えば、フレッチャロッサ、フレッチャルジェント、フレッチャビアンカの3つです。
北から南に至るまでの都市間を結んでいます。
1等 | 2等 | |
ドリンクサービス | ○(スナック付) | × |
BAR車両 | ○ | ○ |
Wi-Fi | ○(有料) | ○(有料) |
電源 | ○ | × |
AVE(アヴェ)
スペイン国鉄RENFEが運行する高速列車です。
最高時速300kmで、スペイン国内の各都市を結んでいます。
Preferente(1等) | Turista Plus(1等と2等の間) | Turista(2等) | |
食事サービス | ○(土曜日除く) | × | × |
BAR車両 | ○ | ○ | ○ |
Wi-Fi(一部区間のみ) | ○ | ○ | × |
ラウンジ利用 | ○(一部駅のみ) | × | × |
Turista Plusの座席はPreferenteと同じです(サービスはTuristaと同等)。
ヨーロッパ鉄道について、よくある4つの質問と回答
その①:座席クラスの等級ってどのように分かれていますか?
基本的に、1等と2等に分かれています。
日本の新幹線にたとえると、1等はグリーン車、2等は普通車です。
座席配置は、おおむね以下です。
- 1等=座席配置は1列+2列
- 2等=座席配置は2列+2列
1等には食事・ドリンクのサービスがあります(一部列車)。
その②:座席指定はできますか?
列車で異なります。
- 全席指定制の列車:ユーロスター、TGV、タリスなど
- 全席自由席の列車:ローカル線や、オランダやベルギーなどの国内線
- 任意指定制の列車:ICEやIC、RailJet、ドイツ・ベネルクス・中欧エリアの列車
その③:フランスからスイスに行くために国境を越えますが、出入国手続きはいりますか?
シェンゲン協定国間の移動であれば、出入国審査などはありません。
ただし、パスポートはつねに携帯するようにして下さい。
警備や捜査などの理由でパスポートの提示を求められることがあります。
その④:ヨーロッパの鉄道は、飛行機より便利ですか?
結論、列車の乗車時間が4時間以内なら、列車移動が便利です。
たとえば、パリ市内からロンドン市内へ移動は、以下です。
✔︎ 列車の場合(計2時間15分)
パリ市内(パリ北駅)→→→(ユーロスター2時間15分)→→→→ロンドン市内
✔︎ 飛行機の場合(計3時間35分)
パリ市内===(バス1時間)===パリ・シャルルドゴール空港→→→(飛行機1時間20分)→→→ロンドン・ヒースロー空港→→→(列車15分)→→→ロンドン市内
まとめ:添乗員の鉄道基礎知識・運賃を知り、ステップアップしよう
添乗員になりたての方は、最初は日帰りバスツアーから始まります。
経験値に比例して、担当するツアーが徐々にレベルアップしていきます。
具体例
- 日数が、1泊2日や2泊3日になる
- 乗り物が、鉄道や飛行機を利用する
- 行き先が、国内から海外になる
鉄道は避けて通れない道なのです。
海外でも、以下のようにステップアップする可能性が高いです。
中国 ⇨ アジア・オセアニア ⇨ イタリア ⇨ ドイツ ⇨ スイス ⇨ トルコ ⇨ エジプト ⇨ アメリカ ⇨ カナダ ⇨ 南米 ⇨ スペイン、ポルトガル ⇨ 北欧 ⇨ 旧ユーゴスラビア ⇨ その他のヨーロッパ ⇨ アフリカ ⇨ 中近東 ⇨ その他の秘境など
※参考「添乗員必殺勉強法」
以上です。
P.S. できることが増えることは楽しいことです。
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