春の手紙の挨拶は、相手によって2つの型に分かれます。
- 改まった手紙:頭語(拝啓)+時候の挨拶+安否を気遣う一言
- 親しい相手への手紙:季節の一言+安否を気遣う一言
ビジネスや目上には漢語調(〜の候)が多く、親しい相手には口語調がなじみます。
3月・4月・5月で使える季語が変わります。
書き出しから結びまで、そのまま使える例文を月別・相手別にまとめました。
春の手紙の挨拶文の基本
手紙には「前文・主文・末文」という基本の流れがあります。挨拶文はこの「前文」にあたります。形式を一度理解しておくと、毎回迷わず書けるようになります。
前文・主文・末文の流れ
📌 手紙の基本構成 前文:頭語(拝啓)+時候の挨拶+相手の安否を気遣う言葉
主文:「さて、」「つきましては、」で始まる用件・本題
末文:相手への気遣い・お願い+結語(敬具)
挨拶文は前文と末文の部分です。主文(本題)が短くても、前文と末文を整えるだけで手紙全体の印象が大きく変わります。
頭語と結語の組み合わせ
頭語と結語はセットで使います。組み合わせを間違えると失礼になるので、事前に確認しておきましょう。
| 場面 | 頭語 | 結語 |
|---|
| 一般的な手紙(もっとも使いやすい) | 拝啓 | 敬具 |
| 改まった・丁寧な手紙 | 謹啓 | 謹白・謹言 |
| 急ぎの連絡・略式の手紙 | 前略 | 草々 |
| 返信の手紙 | 拝復 | 敬具 |
✅ 迷ったら「拝啓〜敬具」 ビジネスでも個人向けでも、「拝啓〜敬具」の組み合わせが無難でもっとも汎用性があります。「前略」は前文(時候の挨拶を含む)を省略する形式なので、季節感を出したい手紙には使いません。
時候の挨拶を入れる位置
時候の挨拶は頭語(拝啓)の直後に入れます。「拝啓 〇〇の候、……」という流れが基本です。
前文の基本パターン(ビジネス)
拝啓 春暖の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
前文の基本パターン(個人)
拝啓 桜の花が咲き誇るころとなりました。皆さまにはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
春の時候の挨拶【3月・4月・5月】

春の時候の挨拶は月によって使える言葉が変わります。ただし地域や年によって季節感は前後しますので、下の目安を参考にしながら、送る相手の地域の季節感に合わせて選んでください。
月別・相手別の早見表
| 月 | ビジネス・目上(漢語調) | 知人・友人(口語調) |
|---|
| 3月 | 春暖の候・早春の候・春分の候 | 春めいてきたころ・暖かさを感じるころ |
| 4月 | 陽春の候・春爛漫の候・桜花の候 | 桜の花が咲き誇るころ・春たけなわのころ |
| 5月 | 新緑の候・薫風の候・若葉の候 | 新緑の美しい季節・若葉が目に鮮やかなころ |
3月に使える書き出し例
3月は「春の始まり」と「年度末・卒業」が重なる月です。まだ寒い日もあるので「春めいてきた」「暖かくなってきた」という表現が季節感に合います。春暖の候は3月から4月上旬頃を目安に使えますが、地域や体感によって前後することがあります。
3月① 春暖の候・ビジネス
拝啓 春暖の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、〇〇の件につきましてご連絡申し上げます。
3月② 早春の候・ビジネス
拝啓 早春の候、皆さまにはご健勝のこととお慶び申し上げます。平素より大変お世話になっております。早速ではございますが、下記の通りご案内申し上げます。
3月③ 口語調(頭語あり)
拝啓 春めいてきたころとなりました。皆さまにはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
3月③ 口語調(頭語なし)
春めいてきましたね。お変わりなくお過ごしでしょうか。
3月④ 年度末を絡めて
拝啓 今年度も残りわずかとなりました。日ごとに暖かさが増してまいりましたが、皆さまにはいかがお過ごしでしょうか。
4月に使える書き出し例
4月は桜と新年度が重なり、一年でもっとも「スタート」の雰囲気が強い月です。桜・春爛漫の言葉を一つ添えると、4月らしい明るい書き出しになります。4月下旬には新緑の気配も出てくるため、地域によっては「新緑の候」を使い始めることもあります。
4月① 陽春の候・ビジネス
拝啓 陽春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、〇〇の件につきましてご連絡申し上げます。
4月② 春爛漫の候・ビジネス
拝啓 春爛漫の候、皆さまにはご健勝のこととお慶び申し上げます。平素より大変お世話になっております。早速ではございますが、下記の通りご案内申し上げます。
4月③ 口語調(頭語あり)
拝啓 桜の花が咲き誇るころとなりました。新年度のスタートにあたり、皆さまにはいかがお過ごしでしょうか。
4月③ 口語調(頭語なし)
桜の季節になりましたね。新年度が始まりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
4月④ 新年度・個人向け
拝啓 春の陽気が心地よい季節となりました。新年度を迎え、ご多忙のことと存じますが、お元気でお過ごしでしょうか。
5月に使える書き出し例
5月は新緑と連休が重なる月です。新緑の候は4月下旬から使い始める地域もあり、5月全般を通じて使いやすい表現です。立夏(5/6頃)以降は「初夏」の表現も自然に使えます。
5月① 新緑の候・ビジネス
拝啓 新緑の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、〇〇の件につきましてご連絡申し上げます。
5月② 薫風の候・ビジネス
拝啓 薫風の候、皆さまにはご健勝のこととお慶び申し上げます。平素より大変お世話になっております。早速ではございますが、下記の通りご案内申し上げます。
5月③ 口語調(頭語あり)
拝啓 若葉が目に鮮やかな季節となりました。皆さまにはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
5月③ 口語調(頭語なし)
若葉がきれいな季節になりましたね。お変わりなくお過ごしでしょうか。
5月④ 連休明けを絡めて
拝啓 新緑の美しい季節となりました。連休も明け、お忙しい日々をお過ごしのことと存じますが、いかがでしょうか。
結びの挨拶【健康・繁栄・応援】
結びは書き出しと対応させるのが基本です。書き出しで「春の陽気」に触れたなら、結びも季節に触れながら相手への気遣いで締めると文章が自然にまとまります。書き出しと同じ言葉の繰り返しは避けましょう。
改まった手紙の結び例
発展祈念・標準
貴社のますますのご発展と皆さまのご健勝をお祈り申し上げます。敬具
自愛と発展の組み合わせ
春とはいえ気温の変わりやすい日が続きます。どうぞご自愛のうえお過ごしくださいませ。末筆ながら、貴社のご発展をお祈り申し上げます。敬具
自愛・3月向け
寒暖差の大きい時季ですので、くれぐれもご自愛くださいませ。敬具
自愛・5月向け
気温の変わりやすい季節が続きます。皆さまどうぞご自愛くださいませ。敬具
親しい相手の結び例
春の気候を絡めて
春の陽気が続きますね。体調に気をつけて、お元気でお過ごしください。
また会う約束
暖かくなったらまたゆっくりお会いしましょう。お返事お待ちしています。
近況を促す
近況など聞かせていただけると嬉しいです。お体に気をつけてお過ごしください。
シンプルな一言
季節の変わり目ですので、お体にはくれぐれもお気をつけください。
新年度・門出を祝う結び例
新任地・着任向け
新任地でのご活躍をお祈り申し上げます。どうぞ体調に気をつけてお過ごしください。敬具
卒業・入学向け
新しい環境でのご活躍を、心よりお祈り申し上げます。敬具
新年度のスタート向け
新年度のご発展と皆さまのご活躍をお祈り申し上げます。敬具
個人・親しい相手向け
新しい環境でも、あなたらしく伸び伸びと過ごしてくださいね。応援しています。
相手別の春の挨拶手紙【例文】
取引先・ビジネスの例文
取引先への手紙は、漢語調(〜の候)+「拝啓〜敬具」のセットが基本です。季節語は月に合ったものを使いましょう。
3月・取引先向け
拝啓 春暖の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、このたびは〜の件でご連絡いたします。末筆ながら、寒暖差の続く折、くれぐれもご自愛くださいませ。敬具
4月・取引先向け
拝啓 陽春の候、貴社ますますご発展のこととお喜び申し上げます。平素より格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。さて、〜の件につきましてご連絡いたします。新年度のご発展をお祈り申し上げます。敬具
5月・取引先向け
拝啓 新緑の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、〜の件でご連絡いたしました。末筆ながら、皆さまのご健勝をお祈り申し上げます。敬具
お礼状・取引先向け
拝啓 春暖の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。先日は〜の件にてご対応いただきまして、誠にありがとうございました。おかげさまで〜することができ、大変助かりました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。敬具
上司・目上の人の例文
上司や目上の方への手紙は、「拝啓〜敬具」の形式を守りながら、漢語調を避けてやわらかい和語に寄せると読みやすくなります。短くまとめたい場合は3〜4文でも十分です。
上司向け・短文版
拝啓 春の陽気が心地よい季節となりました。平素よりご指導を賜り、誠にありがとうございます。今後ともよろしくお願い申し上げます。末筆ながら、ご自愛くださいませ。敬具
上司向け・丁寧版
拝啓 春の陽気が心地よい季節となりました。いつもご指導・ご鞭撻を賜り、誠にありがとうございます。おかげさまで〜することができました。今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。末筆ながら、どうぞご自愛くださいませ。敬具
退職された上司向け
拝啓 桜の花が咲き誇るころとなりました。在職中は長きにわたりご指導いただき、誠にありがとうございました。先生のご指導がなければ今の私はなかったと、改めて感謝申し上げます。今後のますますのご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。敬具
友人・知人の例文
友人への手紙は「拝啓〜敬具」を省いてもかまいません。季節の一言+近況報告か相手への関心で自然にまとまります。
友人向け・春全般
春らしい陽気になってきましたね。お元気でお過ごしでしょうか。こちらは〜しています。暖かくなったらまたぜひ会いましょう。体に気をつけてね。
知人向け・やわらかめ
桜の季節になりましたね。ご無沙汰しておりますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。近況など聞かせていただけると嬉しいです。季節の変わり目ですので、どうぞご自愛ください。
用途別の春の挨拶手紙【例文】
お礼状の例文
お礼状は感謝の気持ちが主役です。時候の挨拶は短めに入れて、感謝の言葉を丁寧に書きましょう。いただいてから日が経っている場合はお礼が遅くなったことへの一言も添えます。
お礼状・ビジネス
拝啓 春暖の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。先日は〜の件につきまして、お心遣いを賜り誠にありがとうございました。おかげさまで〜することができ、心より感謝申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。敬具
お礼状・個人向け
桜の季節になりましたね。先日は〜をいただき、本当にありがとうございました。〜でとても嬉しかったです。またゆっくりお礼をお伝えしたいと思っています。お体に気をつけてお過ごしください。
異動・転勤の例文
異動・転勤の挨拶状は、感謝と今後のご縁をつなぐ言葉を中心に据えます。春の節目感と合わせて書くと自然な流れになります。
異動・ご挨拶状
拝啓 春暖の候、皆さまにはご健勝のこととお慶び申し上げます。さて、私こと〇月〇日付にて〇〇支社へ異動することとなりました。在任中は格別のご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。今後とも変わらぬお引き立てのほどをよろしくお願い申し上げます。敬具
転勤先からのご挨拶
拝啓 新緑の候、皆さまにはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。このたび〇〇支社に着任いたしました。まだ土地勘もなく至らぬこともあるかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。皆さまのご健勝をお祈り申し上げます。敬具
入学・卒業の例文
入学・卒業のお祝い状は、相手の門出を喜ぶ言葉を中心に据えます。桜が咲く4月の季節感と合わせると、より節目らしい文章になります。
入学のお祝い状
拝啓 桜花の候、〇〇さんのご入学をお祝い申し上げます。新しい環境での生活が始まりますね。わからないことも多いと思いますが、あなたならきっと充実した日々を送れると信じています。健康に気をつけて、元気で頑張ってください。敬具
卒業のお祝い状
拝啓 春暖の候、このたびはご卒業のことと存じます。誠におめでとうございます。在学中のご努力に敬意を表しますとともに、これからのご活躍を心よりお祈り申し上げます。新しい環境でもお元気でお過ごしください。敬具
失礼を避けるチェックポイント
時期と地域差に注意したい表現
時候の挨拶の「目安の時期」は地域や年によって前後します。下の表はあくまで参考値として使ってください。相手の地域の気候に合わせて柔軟に選ぶのがポイントです。
| 表現 | 目安の時期 | 注意点 |
|---|
| 春暖の候 | 3月〜4月上旬が目安 | 地域差あり。体感に合わせて前後してOK |
| 新緑の候 | 4月下旬〜5月が目安 | 地域差あり。4月下旬から使い始める地域も多い |
| 余寒の候 | 2月下旬〜3月上旬が目安 | 立春後の寒さを表す語。3月でも寒さが続く地域なら自然に使える |
硬すぎ・軽すぎを避ける
手紙の「硬さ」は相手との関係性に合わせて調整します。硬すぎると冷たい印象、軽すぎると失礼な印象になります。
❌ 友人への手紙に漢語調すぎる例
拝啓 陽春の候、皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
✅ 友人向けに整えた例
桜の季節になりましたね。お元気でお過ごしでしょうか。
❌ 取引先への手紙に軽すぎる例
春ですね。桜きれいですよね。いつもお世話になってます。
✅ 取引先向けに整えた例
拝啓 春暖の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
手紙を整える3つのチェック
📌 送る前に確認したいポイント
頭語と結語の組み合わせは合っているか(拝啓〜敬具など)
二重敬語になっていないか(「お伺いさせていただきます」など)
書き出しと結びで同じ言葉を繰り返していないか(重複は避ける)
よくある質問
「前略」で始める手紙に時候の挨拶を入れてもいいですか?
入れません。「前略」は前文を省略するという意味の頭語です。時候の挨拶は前文に入れるものなので、「前略」で始めた場合はそのまま用件に入ります。季節感を出したい手紙には「拝啓」を使ってください。
手紙の書き出しに「いつもお世話になっております」は使えますか?
「いつもお世話になっております」はメールでよく使われますが、改まった手紙では次の表現がよく使われます。
改まった手紙:「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」
やわらかめ:「日頃よりお世話になり、誠にありがとうございます」
春の手紙に「〜の候」は必ず使わないといけませんか?
必須ではありません。「〜の候」は格式のある漢語調の表現で、改まった手紙や目上の相手への手紙に向いています。友人・知人への手紙なら「桜の花が咲き誇るころとなりました」という口語調の方が自然に読めます。相手との関係性で使い分けてください。
「ご自愛ください」は目上の人に使っても失礼ではありませんか?
失礼ではありません。「ご自愛ください」は目上の方にも使える丁寧な表現です。一方で「お体に気をつけてください」は、目上の方には少しくだけた印象を与えることがあります。目上の方には「くれぐれもご自愛くださいませ」を使う方が丁寧です。
「貴社」と「皆様」はどう使い分けますか?
「貴社」は法人(会社・団体)を指す言葉で、手紙では「貴社」、会話では「御社」を使います。「皆様」は個人・グループを指すときに使います。法人宛ての手紙でも担当者個人の健康を気遣うときは「皆さまにはご健勝のこととお慶び申し上げます」のように使い分けます。
まとめ

春の手紙の挨拶文は、3つを意識するだけで整います。
📌 春の手紙の挨拶文・3つのポイント
① 時候の挨拶(または季節の言葉)で書き出す
② 相手の健康・繁栄を気遣う一言を添える
③ 結びも季節か相手への気遣いで締める
| 月 | ビジネス・目上(漢語調) | 知人・友人(口語調) |
|---|
| 3月 | 春暖の候・早春の候・春分の候 | 春めいてきたころ・暖かさを感じるころ |
| 4月 | 陽春の候・春爛漫の候・桜花の候 | 桜の花が咲き誇るころ・春たけなわのころ |
| 5月 | 新緑の候・薫風の候・若葉の候 | 新緑の美しい季節・若葉が目に鮮やかなころ |